サービスにおいて「参加者」は大切

私は登壇の朝、できるだけ早く会場近辺のカフェ等で準備をするようにしています。
ただ朝7時前だとスタバなどチェーンのカフェはまだオープンしていません。そんな時「開いててよかった」と助かるのが24時間営業のファミレスです。

しかし、残念ながらこの朝のファミレスが一日の始まりのテンションを大幅に下げるということもあるのです。それは、メニューの美味しさでも価格でも、そして接客でもありません。「客」です。

先日初めて立ち寄った都内某所のA店にはまいりました。

席に案内されると目に映ったのは、四人席のテーブルのソファを一人で陣取りテーブルに突っ伏して寝ているおじさん、他の席で椅子に寝そべっている若者。
そして、トイレでは顔を洗い歯を磨いているおっさん(しかも酒臭い!)。
お店のロケーションからすると、きっと彼らは深夜まで飲んだ挙句終電がなくなり、夜を明かすためにここに入ったのでしょう。

さすがに私が店を出ることはありませんでしたが、居心地は最悪。「ここ完全に失敗。二度と来るか!」と思わったのは言うまでもありません。

では店舗スタッフは、このような光景を認識しておらず何もしていないのか?
いや、そんなことはないようです。

トイレには「洗面したり着替えたりしないでください。」「長時間の個室使用や睡眠は、他のお客様の迷惑になります。おやめください。」の貼り紙。
また、席には「睡眠などのご利用はご遠慮ください。」などの注意書きが立ててあります。
きっとこのような「困った客」は珍しくなく、店舗側はこのようなメッセージで悪い客を撲滅しようとしているのでしょう。しかし、残念ながら飲み明かした睡眠不足の酔っぱらいには、このような貼り紙は有効に機能しません。しかもこういう貼り紙自体が、お店の雰囲気をより残念なものにしています。

サービス業のマーケティングミックス7P(※)の一つに、「参加者(participants)」という要素がありますが、これは(特に複数の人に同時に価値提供する)サービス業においてはそれを提供する側だけではなく、そこに参加する人(顧客)もマーケティング上重要であることを示しています。
先のファミレスA店での様子は、(ネガティブな面で)まさにその典型的な例です。

他にも、例えばフィットネスクラブで、ある常連会員がいつもマシンを専用したり他の会員にやたら横柄な態度をとったりすれば、他の会員を逃がすことにつながるでしょう。もっと極端な例としては、「あの(電車)路線が痴漢が多い。」と噂が広がるとその路線や電車のブランド価値も下がるようなこともあります。

翻って、これは私自身の仕事でも大いに関係します。例えば研修の場において、明らかにやる気のない態度を示したり、途中でスマホを触ったり離脱するような人がいると明らかに周囲に悪影響を与え、全体の学びや気づきの質低下にもつながります。

「困った参加者」をゼロにするのは容易ではありません。先のファミレスのように注意書きや警告も一つの方法ですが、過度に行うと「良い顧客」への印象も悪くします。
ウルトラC的な解決方法はないかもしれませんが、直接的な「圧力」では解決せず「顧客の良識を信じ、気づきを促す」という方向性が有効なのではと考えます。
さらには、(ファミレスでは難しいかもしれませんが)マーケティングミックスの工夫(価格や接客、場の雰囲気等)により、良い顧客を引き寄せ、困った客を最初から寄せ付けないようなことをすることも大切でしょう。

提供者の自分としては、「良い参加者」と一緒に良いサービスをつくるにはどうしたらよいか?そして、消費者の自分としては、自分が無意識に「悪い参加者」になっている場面はないかをあらためて振り返るきっかけとなる朝のファミレス体験でした。

 

※サービスマーケティングの7P:マーケティング戦略を組み立てる要素(マーケティングミックス)として汎用的な4P【製品(product)、価格(price)、流通(place)プロモーション(promotion)】に、三つのP【参加者(participants)、物的な環境(physical evidence)、サービスの組み立てのプロセス(process)】を加えたもの。なお「participants」は「people」に置き換えられる場合もある。

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