プロの仕事は哲学の上に ~ 安藤忠雄展

先日「安藤忠雄展 挑戦」(六本木・国立新美術館)に出かけてきました。
安藤忠雄氏(1941年大阪府生まれ)は、言わずと知れた世界的に有名な建築家。元プロボクサーで独学で建築を学び、現在に至るまで数多くの作品で世界的に活躍される異色の経歴の持ち主です。

広く知られる代表作としては、「表参道ヒルズ」、「東急東横線新渋谷駅」、「直島のベネッセハウス」等がありますね。

今回の個展は、安藤氏自身がデザインされた空間デザインの中、代表作の一つ「光の教会」の原寸大をはじめ、模型やスケッチ、映像などを多数の資料を閲覧できるぜいたくなものでした。

実は私、建築学科を卒業です。(自分でも忘れてしまうほど、その分野から遠のきましたが 笑)
学生当時、大の安藤忠雄ファンというわけではありませんでしたが、同級生の間でよく話題にのぼりました。鮮明に覚えているのは、在学中に京都木屋町の高瀬川沿いにできた商業施設「TIME’S」(1984年)です。古都の街並みを代表するロケーションにコンクリートの打ち放しの外観は衝撃的でした。新鮮でありながらも、フロアレベルを高瀬川の水面ぎりぎりまで下げるなど周囲との一体感をつくり、決して景観を壊すものではありませんでした。

建築分野を離れたこともあり、私がその後目にした安藤作品は、「表参道ヒルズ」、「21_21 DESIGN SIGHT(ミッドタウン)」、「東京大学情報学環・福武ホール」などごく一部です。どれも一生活者としての接点に過ぎませんが、安藤氏の作品は「一目でそれとわかる」斬新さが魅力で、ひと味違った心地よさや緊張感を提供してくれます。

そんな作品を支えるのは、安藤氏の独自のアイデアと技術なのだろう、すごいなあくらいに漠然と考えていました。

しかし今回強く感じたのは、「安藤ワールド」を形成するのはアイデアやテクニックというより、土台にある「哲学」であるということです。
例えば、「建築とは何か?」「施主とは?」「人とは?」というような。

安藤氏は、「私は建築の本質とは、人口と自然、個人と社会、現在と過去といった、人間社会にまつわる多様な事象のあいだの関係づくりであると考えています」と述べています。

ぶれない哲学の中で、施主の要望、周辺環境を含む立地、予算等の制約条件なか、悪戦苦闘しながら紡いでいった結果が、目に見える一貫性した個性として形づくられているのでしょう。そして安藤氏は、その一連のプロセスを「挑戦」と言っています。

年齢のせいでしょうか?私も、仕事において「どのように」というテクニックよりも「なぜこの仕事をしているのか」や「私が提供する意味は何か?」を自問することが多くなりました。
これはまさに哲学です。

「プロの仕事は、ぶれない哲学に根差している」
そんな当たり前のことを、今一度安藤氏から教わり確信しました。

哲学があるからこそ、技術も高められるし、「らしさ(個性)」も輝きを増すのですね。

研修にしろコンサルティングにしろ、私の仕事は建築のように形を残すものではありません。でも、社会に役立ってなんぼという点で根っこは同じです。

私も自身の哲学を深め、プロとして磨きをかけ続けていきたいと思います。

それが私にとってずっと続く「挑戦」です。

 

安藤忠雄展 挑戦

 

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