こんにちは。鈴木一です。
さて、あなたが企業の育成ご担当であれば、コロナ禍を経て今後の研修をオンライン研修に切り換えるかどうか、そんなことを今まさに検討されているのではないでしょうか。私もそんな相談を企業様からいただきます。
前提として強調したいのは、zoomなどいろんなツールが充実してきたからと言って、何でもオンライン研修にすべきではないということです。
本来、リアルをオンラインに「置き換える」という発想ではなく、ゼロベースで再構築していくことが必要だと考えます。
とはいえ、人事担当としての業務としては「オンラインに置き換えるか?」というのは現実的な論点の一つですので、ここではわかりやすく「置き換え」という言葉を使っています。
ではどう考えるか?
既存の研修をオンライン研修に置き換えるかどうかを検討する際は、対象となる研修について「5W2H」、とりわけ「WHY(目的)」、「WHAT(内容)」、「WHO(対象者の属性)」をチェックすることをおすすめします。
本記事ではそのうち「Why(目的)」を取り上げます。(出し惜しみでなく記事が長くなりそうなので。。)
「Why(目的)」つまり対象となる研修は、どんな目的で実施するのか。
それによって、オンライン研修にしてもいいもの(しやすいもの)、もしくはオンライン化しない方がいいものがあるということです。
具体的には
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研修目的が「知識や型の習得(理解)」
研修目的が「知識や型の習得」であれば、オンライン研修にできるでしょう。むしろオンライン研修の方が効率的かもしれません。そしてオンライン研修の中でも。受講者の都合の良いときに学習できる「オンデマンド型プログラム」が適切ではないでしょうか。
具体的には、法的な知識やその他専門分野の研修などがあてはまります。
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研修目的が「スキルの習得」
研修目的が比較的定型的なスキルの習得であれば、工夫次第でオンラインでも実施可能でしょう。
講義と個人ワーク、加えてzoomの「ブレークアウトセッション」等の機能を使ったグループワークを組み合わせて、互いにアウトプットをすり合わせるような方法で実施します。
私が担当する研修分野では、ミニケースを繰り返すロジカルシンキングや問題解決研修等がここにあてはまると思います。
ただ、スキルの習得が目的の場合、リアル研修(集合型研修・対面型研修)においては。グループ内で合意形成してアウトプットを作り出すプロセスや、他のグループのアウトプットを眺められる一覧性が学習効果に大きく寄与します。したがって、zoomの機能等を使っても限界があり、オンライン研修(ウェビナー)では到達ゴールは下がってしまうことは否めません。私が担当する分野では、「問題解決ワークショップ」等はリアル研修の方が高い研修効果が生まれます。
また、スキル習得でも実技を伴うもの、例えば、プレゼンテーションのデリバリーを相互に行ってフィードバックを交換するようなもの、またマナー研修における名刺交換などは実際にやってみないと習得できませんから、オンライン研修(ウェビナー)にはあまり向きません。
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研修目的が「事例や情報のシェア」
社内での成功事例を共有したり、テーマに基づいた情報交換を行う場合は、工夫によりオンライン研修(ウェビナー)でも実施可能でしょう。発表者が持ち回りでプレゼンし、それについて質問したり感想を述べたりするような方法でしょう。
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研修目的が「感情面も含んだ振り返り、一体感の醸成、エンゲージメントの向上など」
「同じ場」を共有して、現状を複数名で対話、傾聴しながら共感を得たり内省したりする。また同じテーマに取り組むプロセスから一体感を醸成したり、組織に対するエンゲージメント(愛着心や思い入れ)を高めたりする。そんな場合は、リアル研修(集合型研修・対面型研修)にこだわるべきだと思います。
リアル研修における非言語を含む人と人のやり取りや、休憩時間のちょっとしたインフォーマルなコミュニケーンから得られる効果は大きいはずです。
「本当に大事なものは、zoomでは伝わらない」
といったところでしょうか。
例えば、同期と一緒にこれまでの出来事を共有してこれからのキャリアを考えてみるというような研修、一段高いポジションを目指す同士が各地から集まり現状の悩みや今後のビジョンを描くような研修は、ウェビナーには代替されにくいでしょう。
いかがでしょうか。
オンライン、zoomその他のシステムはあくまでも手段です。
研修目的によって、オンライン研修にすべきものとしてはいけないものがある。
そもそも、この研修の目的は何だっけ?そんなシンプルな問いからスタートするだけでも整理がつきやすいのではと思います。
ご検討の助けになれば幸いです。